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zoom RSS EEPROM−記憶した情報の消去法(その1)−

<<   作成日時 : 2006/11/05 20:48   >>

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 EPROMは電気信号で情報を書き込める不揮発性半導体メモリーでしたが、情報の消去は紫外線を当てて行います。しかしこれでは不便で、消去も電気的に行えるようにしたいというのは当然の要求でした。一方でメモリーセル当たりの面積をできるだけ小さくして、小さな石に大量の情報を記憶できるようにしたいという要求もありました。勿論、書き込み、読み出し、消去の各動作を高速にしたいという要求もありました。

 これらの要求を満たすような不揮発性半導体メモリーの開発は1980年代前半以降、活発に行われてきましたが、各要求に応える技術が複雑に絡み合っていて開発の進展はあまり分かりやすいものではありません。しかし技術のテーマは大きく分けて2つになると思います。

 一つは記憶された情報の電気的な消去についてで、浮遊ゲートから電子を引き抜く方法についての研究開発です。もう一つは回路の開発です。メモリーセルをどういう回路で構成し、さらに複数のセルをどう接続したらよいかという問題です。この2つの技術課題は独立ではなく絡み合っていて別々に解決できるものではありません。しかしまずは一つめの記憶の消去に絞ってみていくことにしましょう。

 情報の書き込み、すなわち絶縁膜を越えて浮遊ゲートに電子を入れるには、トンネル効果を使うか、電子を高いエネルギーにして絶縁膜を乗り越えさせるか、の2通りの方法があります。トンネル効果を使うには非常に薄い絶縁膜が必要で、これを安定に作るのが難しかったため、まずは電子に高いエネルギーを与える方法が使われました。

 電子に高いエネルギーを与える方法として電子なだれ(アバランシェ)破壊(電子なだれ降伏とも言う)が使われたことはすでに説明しました。その後、時代が進むにつれて、電子なだれ破壊によるという説明はあまりなされなくなり、ホットエレクトロンが浮遊ゲートに注入されるという説明が普通になっています。ホットエレクトロンというのは訳すと「熱い電子」です。あまり厳密な定義はないようですが、エネルギー障壁を越えられるような高いエネルギーをもった電子のことを言います。真空管などで使われる加熱した金属から飛び出す熱電子は熱で飛び出す電子という意味で言葉としては別物ですが、エネルギーが高いという意味では似ています。

 話を戻しますが、MOSFETのチャンネルを流れる電子のエネルギーが絶縁膜を越えられるほど高くなれば、別に電子なだれ破壊が必ずしも起きていなくてもよいので、こういう言い方になったように思われます。

 チャンネル内の場合は高電界をかけて電子を加速し、半導体原子に衝突させて新たに高いエネルギーの電子を発生させるという手段がとれます。しかし浮遊ゲートにいる電子を加速することはできません。ホットエレクトロンに対してホットホール(熱い正孔)もありますので、これを発生させて浮遊ゲートに送り込み、電子と中和させるというアイデアもありましたが、書き込みのときホットエレクトロン、消去のときホットホールというふうに切り換えて発生させるのは同じチャンネルのなかでは難しい話でした。

 ここで復活してきたのがトンネル効果です。トンネル効果を使った消去について提案している特許をみてみましょう。例えば三菱電機が1982年に出願した特許1878212(特公平4−80544)があります。この特許をみるとEEPROMという語が記されています。最初の3文字EEPはElectrically Erasable and Programableの略で、電気的に書き込み、消去ができるという意味です。

 この特許の最初の部分にFowler-Nordheim(FN)トンネル現象という語が出てきます。ファウラー−ノードハイムと読みます。これと普通のトンネル現象との違いは図Aに示すエネルギーバンド図で説明されます。普通のトンネル現象は(a)のように厚さdの絶縁膜を電子が通り抜けるものです。ところが絶縁膜に高い電界をかけるとエネルギーバンド図は(b)のようになり、電子にとってはトンネルする絶縁膜の厚さがdより薄くなったように見えることになります。つまりトンネル現象は電界が高くなるほど起きやすくなります。もちろんあまり大きな電界をかけると絶縁膜が壊れてしまいますので、限度はあります。このようなトンネル効果をFNトンネルと呼んでいて、EEPROMでもこれが起きているというわけです。画像

 この特許の素子は書き込みにもトンネル効果を使うことを考えています。素子の構造は図Bのようなもので、浮遊ゲートと半導体基板の間の絶縁膜6cの厚さを3〜10nmと薄くしてあるだけで構造上の特徴はあまりありません。この特許で問題点としているのは従来、トンネル効果を使って書き込み、消去を行う際、絶縁膜5cの同じ部分を使っているとその部分に一部の電子が残って次第に蓄積されてしまい動作が不能になるということです。そこで書き込みと消去で電圧のかけ方を工夫し、書き込みと消去で電子が絶縁膜を通過する位置を変えたというのがこの特許の特徴です。これは書き込みにはホットエレクトロンを使う場合にも同じことが言えそうです。

 具体的に説明してみましょう。例示されている半導体基板1はp型ですから、nチャンネルMOSFETの例で説明します。まず書き込みの場合ですが、ソース3と基板1を接地し、制御ゲート7(図には書かれていませんが外に繋がっている電極です)とドレイン2に同じくらいの正の電圧をかけます。そうするとソースに対して正の電位をもつ制御ゲートに引かれて電子がソース3から浮遊ゲート5へ注入されることになります。

 消去の場合は、基板1、制御ゲート7、ソース3を接地し、ドレイン2にだけ正電圧をかけます。すると制御ゲートに対して正電位になったドレインに引かれて、浮遊ゲート5にいる電子はドレインへ引き抜かれることになります。つまり書き込みのときはソース付近の絶縁膜を電子がトンネルし、消去のときはドレイン付近の絶縁膜をトンネルすることになるので、行き帰りに通る経路が違うことになります。

 消去のやり方はこれだけではなく、別の方法も考えられています。それは次回説明することにしましょう。

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