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zoom RSS EEPROM−記憶した情報の消去法(その2)−

<<   作成日時 : 2006/11/11 21:51   >>

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 EEPROMで記憶情報を消去する原理として前回、トンネル効果を使って浮遊ゲートから半導体基板へ電子を引き抜く方法を説明しました。この方法は浮遊ゲート方式の半導体メモリーが発明された当初から考えられていたものです。繰り返しになりますが、難点は非常に薄い絶縁膜を作らなければならないことです。

 そこで薄い絶縁膜を使う必要のない別の方法が考えられました。今回はそれをまた特許を使って紹介します。その特許は特許1421951号(特公平61−39752号)で、1980年に東芝社から出願されたものです。発明者は舛岡富士雄氏(現、東北大教授)で、先頃、東芝社に対して発明の対価を求める訴えを起こされたことで話題になりました。画像

 さて素子の構造と動作を特許の図面を使って説明します。図は素子の断面図で2つの図はちょうど直角に素子を切ったときの2方向の断面図を示しています。(c)の方をみるとMOSFET2個分が描かれていることがわかります。p型Si基板11の表面にn型のソース、ドレイン領域19A、19Cが作られています。19Aの方は2つのMOSFETが共通に使うようになっています。

 15a、15cが浮遊ゲートです。(b)の図をみると、この浮遊ゲートは複雑な形をしています。MOSFETのチャンネル部分ではもっとも半導体表面に近づいていますが他の部分は表面から離れています。18A、18Bはいわゆる制御ゲート、つまり普通のMOSFETのゲート電極です。これだけならこれまでの浮遊ゲートを使った半導体メモリーと同じですが、さらに14というゲートが作られているのがこの素子の特徴です。これが情報の消去に使う消去ゲートです。(b)の図では浮遊ゲートのように見えますが、実際には紙面の奥に向かって延びていて外部から電圧がかけられるようになっています。

 つぎに動作を説明します。まず情報の書き込み(浮遊ゲートへ電子を入れる)動作です。これは前に説明したホットエレクトロンによる方法が使われています。制御ゲート18Aとドレイン19Cに+20V位の電圧をかけ、ソース19Aを0Vにすると、チャンネル内の電子が加速されて浮遊ゲートに入ります。

 情報の読み出しもこれまでと同じです。制御ゲートに+5V位をかけて、ソース−ドレイン間に電流が流れるか、すなわちオンかオフかをみれば浮遊ゲートに電子がいるかいないかを判定できます。勿論この読み出しで浮遊ゲートに電子が入ったり逃げたりはしません。

 消去はどうするかといいますと、制御ゲートとドレインを0Vにし、消去ゲート14に+40V位の高いパルス電圧をかけます。すると浮遊ゲートにいた電子は消去ゲートに向かって放出されます。この放出の原理は電界放出(フィールドエミッション)であると書かれています。この電界放出というのは熱電子放出と似た現象です。熱電子放出は金属などを真空中で加熱すると電子が飛び出すというものですが、加熱しなくても高い電圧をかければ電子が飛び出すことが知られています。

 素子内では真空中ではなく絶縁体中への電子放出になります。これが本当に起きているかどうかどうやって調べるのかは特許には書かれていません。浮遊ゲートと消去ゲートの間の絶縁膜の厚さは50nmとなっていますので、トンネル効果が起きるには少し厚つ過ぎるようです。いずれにしてもこれまでの素子と大きく違うのは、浮遊ゲートの電子を半導体基板に逃がすのではなく、新たに消去ゲートを作ってそこへ引き出すようにした点です。

 この素子の特徴として、消去には少し高い電圧が必要ですが、書き込み、消去、読み出しをすべてプラスの電圧の切り換えだけで行うことができる点があげられます。また前回の素子とちがって1つのメモリーセルに2つのトランジスタを使う必要がなく、1つのトランジスタだけですべての動作が行えることも大きな特徴です。これは素子が小さくなって小さな面積により多くの情報が記憶できるようになることを意味します。

 以上のようにこの素子は優れた点を多く持ちますが、図をみてもわかるように構造が複雑です。作るのが難しそうです。特許では素子の作り方を図解してかなり詳しく説明しています。ここでは詳しく触れることはしませんが、簡単に説明しておきます。まず浮遊ゲートが複雑にうねっていますが、一番半導体表面に近づいている部分12a、12bをどう作るかについて。これは厚い絶縁膜13を先に付けて、12a、12bの部分に穴を開け、下地のSiを熱酸化して厚さ100〜200nmのSiO膜を作っています。

 そして絶縁膜13の上に先に消去ゲート14を作ります。これは多結晶(ポリ)Siです。そしてその上の絶縁膜(浮遊ゲートとの間に挟まる絶縁膜です)はこのポリSiを熱酸化して作っています。熱酸化法であれば厚さ50nmのSiO膜を作ることは容易です。その後、ポリSiの浮遊ゲートを付けると図のようにうねった形ができます。あとは絶縁膜と電極を繰り返して作れば、素子が完成するというわけです。

 前回の構造の素子と今回の構造の素子にはそれぞれよい点があり、どちらかを使えば、書き込み、消去を両方とも電気信号で行えるEEPROMが作れることになります。しかし最近急速に普及してきたフラッシュメモリーの実現にはさらにもう一歩の進展が必要です。それは次回に。

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