石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 太陽電池の効率を低下させる原因(その3)

<<   作成日時 : 2008/11/16 19:26   >>

ナイス ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

 前回、前々回は光が太陽電池のセルの中にうまく入ってくれない問題を扱いました。今回は入ってくれはするものの電気に変換されずに通り抜けてしまうという問題を考えてみます。

 太陽電池の原理に戻ってみると、半導体のバンドギャップエネルギーより大きいエネルギーをもった光が入射すると電子、正孔ができて電流が流れるわけですが、このような光も半導体中で完全に100%吸収されるわけではありません。
画像
 ある物質に光が入射すると図Aに示すように、光の強度は入射したx=0の点から光が進むにつれて弱くなっていきます。これがその物質の光吸収です。光吸収の程度を表す量として吸収係数があります。この吸収係数αは次のように定義されます。図のように光が物質中を距離d進んだとき光強度が最初の1/eになったとします。このときd=1/αと書いてこのαを吸収係数とします。なお、eは自然対数の底と言われる定数でその値は約2.7ですから、1/eは大雑把に1/3程度です。

 吸収が強く起こる物質では光は急に弱くなりますからdが短く、αは大きくなります。つまり吸収係数αが大きい物質とは光の吸収が強く起こる物質ということです。ただαは波長によって大きく変わりますから、その大小を言うときには波長を指定しないと意味がありません。つまり物質のバンドギャップエネルギーより大きいエネルギー(短い波長)の光ではαは大きいですが、バンドギャップエネルギーより小さいエネルギー(長い波長ではαは小さくなります。

 これは物質の基本的な性質で光吸収特性と言います。図Bのグラフを見て下さい。グラフの横軸は光のエネルギーをエレクトロンボルトの単位で表しています(1.24をこの横軸の値で割れば、μm単位の波長になります)。縦軸は吸収係数です。吸収係数は長さの逆数ですから単位は図ではcm-1となっています。吸収係数は波長によって何桁も変わりますので、グラフの縦軸は対数目盛にしてあります。

 図は太陽電池によく使われているシリコン(Si)とGaAsの室温での特性をごく大雑把に示してあります。細かい数字までは正確ではありません。Siのバンドギャップエネルギーは約1.1eV、GaAsは約1.4eVです。図を見ると両方の物質ともバンドギャップエネルギーより小さいエネルギーの光に対して吸収が急激に小さくなっているのがわかります。

 ところがバンドギャップエネルギーより大きいエネルギーでの吸収係数の変化はかなり様子が違います。GaAsは急に吸収係数が大きくなり一定値に近づく感じですが、Siではだらだらと増加しています。大体2eV前後のエネルギーが太陽光の強い可視光の波長範囲に相当しますが、このエネルギーでSiの吸収係数はGaAsのそれより一桁以上小さいことがわかります。

 2eVのエネルギーでSiの吸収係数は大体104cm-1です。ということは厚さ1μm(=10-4cm)のSi膜に入射した光は強度が1/3くらいになったところで裏から抜けてしまうことになります。単結晶Siの太陽電池では数10μm以上の厚みのSi基板を使うのであまり問題になりませんが、多結晶Si膜を使った太陽電池ではこのように吸収されずに抜けてしまう光が変換効率を低下させる要因になります。
画像
 このような場合の対策としてすぐに考えられるのが、裏面に反射膜を着けて抜ける光を折り返してやる方法です。これは裏面側には元々電極を着けるので、その金属面の反射を利用すればよいので簡単です。ただ反射した光が今度は表面側から抜けてしまう問題が残ります。これにも対処する方法を特許から一つ紹介しておきます。

 図Cは特開平9-307130号に示されている図面です。表面に凹凸があるのがポイントです。上から入射する光はこの凹凸面3S1で屈折し太陽電池内を斜め方向に進むため、裏面で反射した光も多くは斜め方向に進み、上面の凹凸面3S1で全反射されやすくなります。このため何度も上下面で反射されて往復し、太陽電池から外に抜けにくくなります。

 具体的にはガラス基板1上に非晶質(アモルファス)Siを成長させ、これをレーザ光により熱処理して結晶化し多結晶Siの下地層2を形成します。その上に同じ方法でSiを成長させると、下地の影響で多結晶層が成長し、これが太陽電池としての光電変換層3となります。そして表面には自然に角錐状の凹凸ができるようです。

 下地層2をp型Siとし、ノンドープの光電変換層3の上にn型Si層4と透明導電膜5を着けて太陽電池としています。凹凸面側を光入射面とし、p型Si下地層2の表面で入射光を反射します。入射光は実際の光電変換層の厚みの10倍以上も長い距離、光電変換層中を走行し、これによって変換効率も2倍程度向上したと書かれています。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
ナイス ナイス
驚いた
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
太陽電池の効率を低下させる原因(その3) 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる