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zoom RSS T−V−Y族化合物半導体薄膜太陽電池

<<   作成日時 : 2009/07/19 20:22   >>

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 T−V−Y族化合物半導体とは聞き慣れないかと思います。太陽電池では実用化されていますが、他のデバイスへの応用はほとんどなされていないので、あまり一般に知られているとは言えない材料です。前回紹介したU−Y族のU族元素をT族とV族に分けた物質と考えればよく、以下説明するように薄膜太陽電池としてはかなり優れた特性をもっています。しかし半導体としてそれほど特徴があるわけではないので、広く応用はされていないものと思われます。

 T−V−Y族で太陽電池にもっともよく使われているのはT族が銅(Cu)、V族がインジウム(In)、6族がセレン(Se)のCuInSeです。6族元素が2個ですから、T−V−Yと書かれることもあります。また元素名の頭文字をとって、CIS半導体と呼ばれることもあります。T族としては他に銀(Ag)などもあり、V族にはGa、Y族にはSやTeを用いるいろいろな変化があり得ます。
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 このT−V−Y族化合物半導体のことをカルコパイライト系半導体ということもあります。カルコパイライトと(Chalcopyrite)いうのもあまり聞き慣れない語ですが、これは黄銅鉱という鉱物の名前です。この黄銅鉱はCuFeSが主成分で、CISのInがFeに置き換わった物質であるのが分かります。ここからCISをカルコパイライト系半導体と呼んでいるわけです。

 なお、CISのバンドギャップエネルギーは約1eVで、太陽電池としての最適地1.4eVよりかなり小さい値です。そこでバンドギャップエネルギーを大きくするためにInの一部をGaに置き換えたCu(InGa1−x)Seの方が最近は一般的です。これを略してCIGSと呼ぶことがあります。

 この一風変わった材料が初めて太陽電池に応用されたのは1970年代半ばのことで、アメリカのベル電話研究所によって太陽電池が試作されています。ベル研究所の研究は単結晶を使ったものでしたが、すぐに多結晶薄膜化の検討が始まりました。ボーイング社による研究はその代表的なもので、その内容は例えば特公平5-57746号に記されています(元のアメリカ出願はアメリカ特許4335266号で、1980年の出願です)。この特許はそれまでの研究の背景なども詳しく書かれており、文献として貴重なものです。なお、この日本特許に「黄銅鉱」という語がたびたび出てきますが、これは上記のように原文の「カルコパイライト」が訳されたものです。

 図Aは上記特許に記載されているCIS薄膜太陽電池の構造ですが、この構造はその後も基本的に変わっていません。基板31はここではアルミナが使われていますが、ガラスでも構いません。基板の上に電極32を設けます。材料としてはCIS膜とオーミック接触するモリブデン(Mo)がよく使われます。その上にp型CIS薄膜35とn型CdS薄膜でpn接合が形成されます。CdS膜表面に格子状の金属(Alなど)の電極38と反射防止膜(SiOなど)40を着けます。

 CdSはCISよりバンドギャップエネルギーが大きく、窓層としてはたらき、太陽光はCIS膜で吸収されて光電変換されます。この原理は前回のCdS/CdTe系太陽電池と同じです。得られた太陽電池の変換効率はこの段階ですでに10%近くになっており、薄膜太陽電池としては高い効率が期待されました。

 この特許に書かれているCIS膜の作り方は図Bに示すように基本的に真空蒸着法です。CIS層は89の室で作られますが、原料としてCu、In、Seを別々に加熱して蒸発させる多元蒸着法を用いています。基板は図の左から右へ送られ各室でそれぞれ異なる材料の層がそれぞれそれに適した方法で作られます。

 この材料では太陽電池の性能が膜の性質によって強く影響されるので、膜の作り方がかなり重要です。細かい説明は省略しますが、この特許にも各原料を蒸発させる量を微妙にコントロールする方法が説明されています。

 アメリカではこの後、アルコソーラー(ARCO Solar)社がCIS太陽電池の開発、製品化を力を入れて行いました。セルそのものだけでなく、集積型のモジュールの開発も行っています。モジュールの構造や作り方は基本的にはアモルファスSiのモジュールと同じです。アルコソーラー社はその後、シーメンス・ソーラー(Siemens Solar)社となり、CIS太陽電池を製品化しました。

 このアルコソーラー社は多元真空蒸着法とは少し違った方法を開発しました。この方法は特開昭62-20381号に書かれていますが、CuとInの2層膜をスパッタリング法などでまず基板上に着けます。つぎに高温でSeを含むセレン化水素(HSe)などを流して反応させると、CIS膜ができるというものです。最初のCuとInの膜の厚さによってCIS膜の組成がコントロールできるという特徴をもっています。

 その後、多くの企業が開発を手がけ、とくにCIS膜の作り方についてもいろいろな検討がなされました。その結果、薄膜太陽電池ではもっとも高い18%台の変換効率も報告されています。日本では1990年代になって松下電器社などを中心に多くの会社がCIS太陽電池の開発に加わりました。現在、昭和シェルソーラー社がCIS太陽電池のモジュールを販売しています。

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