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zoom RSS 有機半導体

<<   作成日時 : 2009/08/02 20:27   >>

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 「有機物」とは動植物、生体を形作っている物質という意味ですが、化学的には炭素の化合物を言います。ただし炭酸カルシウムとか炭化珪素などは炭素化合物であるにもかかわらず、普通は無機物とされます。典型的な有機化合物は炭素同士の結合があるものと考えれば大体はいいのですが、炭素1個のメタンは普通有機物とされます。このように有機物と無機物の境界はそれほど明確ではなく慣習に従っているので、そこはあまり厳格に考えないほうがよさそうです。

 この有機化合物は炭素のほか水素、酸素、窒素など比較的少ない種類の元素しか含まず、電気的には絶縁性で、光学的には可視光に対して透明なものがほとんどです。ところが一部に電気抵抗が小さく電流が流れたり、着色していて可視光を吸収するようなものもあります。このような性質は無機物の半導体がもっている性質に近いので、このような物質を有機半導体と呼んでいます。

 有機物のこのような性質は無機半導体の研究が盛んになった1940年代には既に見つかっていて、研究は行われていました。もっとも早く有機半導体が実用化されたのは電子写真用感光体です。電子写真というのは複写機やプリンタに使われている印刷の方法の一つです。感光体の表面を印刷したい文字や画像の形に帯電させ、そこに炭素の粉を静電気の力で付着させます。その炭素の粉を紙に移し取って焼き付けるのが電子写真の印刷原理です。
画像
 このとき感光体は光導電体で作ります。光導電体は暗いところでは抵抗の高い絶縁体で、表面を静電気で帯電することができます。しかしこれに光を当てると抵抗が下がり、帯電した電荷が放電してしまいます。そこで印刷したい原稿の白い部分は感光体に光を当てれば、その部分には炭素の粉が付かず、印刷した紙も白くなります。

 この感光体は普通繰り返し使えるように円筒形にし回転できるようにします。そのため、感光体材料は曲げることができる薄い膜にするのが便利です。最初は無機半導体のセレンが使われましたが、現在では有機半導体が多く使われているようです(無機のアモルファスシリコンなどもありますが)。この感光体は材料の光導電特性を利用していますが、電極が設けるなど細かい加工は必要なく、単なるシートです。

 有機半導体がデバイスとして実用化されたのは最近のことです。有機ELと呼ばれる発光デバイスがそれです。ELはelectroluminescenceの略で、電界発光と訳されています。有機発光デバイスの略でOLEDと呼ばれることもあり、発光ダイオードと混同されることもありますが、原理的には少し違います。これについては独立して取り上げる必要があると考えています。

 さて有機半導体ですが、光電変換の仕組みは無機半導体のそれとは大分様子が違います。今回はそれを説明します。

 有機半導体であっても半導体としてのはたらきを担うのは動くことのできる電子です。この動ける電子がどのように生まれるのかが重要な点です。無機半導体では原子の価電子がエネルギーを得て原子による束縛から解き放たれ自由に動けるようになりました。また微量の添加物を入れると電子を自由にするためのエネルギーを小さくすることができました。

 有機半導体では様子がだいぶ違います。代表的な有機半導体は電荷移動という原理で動ける電子が供給されます。有機分子のなかには電子を放出しやすいタイプがあります。これを電子供与体(ドナー)と呼びます。逆に電子を受け取りやすいタイプもあり、これを電子受容体(アクセプタ)と言います。無機半導体の場合は電子を出しやすい不純物原子をドナー、受け取りやすい原子をアクセプタと呼びました。はたらきは近いですが、別物ですので注意が必要です。

 有機分子の場合のドナー、アクセプタは1つの原子ではなく、複数の原子からなる分子です。さて、このドナーとアクセプタの分子は混合すると、ドナー分子の電子がアクセプタ分子へ移動して弱い結合を作ります。この電子の移動のことを電荷移動といい、結合してできたものを電荷移動錯体と呼びます。

 電荷移動錯体は元の2つの分子にはなかった波長での光吸収が起きたり、移動する電子のよって電気伝導が起きやすくなることが多く、これが有機半導体としての性質となります。

 どういう有機物質がドナー分子でどれがアクセプタ分子かというのはあまり単純でなく、原子と違って分子は種類が多いので、分かりにくいところです。今回は典型的な電荷移動錯体を紹介するに留めます。

 まずもっとも古くから知られ、感光体としても応用されたポリビニルカルバゾール(PVK)という高分子材料があります。これは電子供与体(ドナー)としてよく知られています。これにトリニトロフルオレノン(TNF)という電子受容体(アクセプタ)を添加すると可視光を吸収する電荷移動錯体ができます。

 また単体の分子で可視光を吸収する有機材料としては色素あるいは染料が知られています。例えばフタロシアニンは図のように4角の複雑な形をした分子の色素ですが、中央に金属Mを取り込んで金属フタロシアニンになります。例えば銅フタロシアニンは青色の色素で熱にも強く安定なため、ペンキなどの着色剤として使われています。この色素はn型つまり電子供与性で、太陽電池への応用が研究されたことでよく知られています。

 次回に具体的な太陽電池の構造などをもう少し紹介します。




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