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zoom RSS 導体と絶縁体

<<   作成日時 : 2011/04/03 22:56   >>

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 前回まで紹介した孤立した原子からの近似によるバンド理論の考え方の利点は、個々の具体的な原子の電子配置から、その原子が作る結晶の性質が推測できることにあります。本書(*)ではNaClとダイヤモンド(C)の結晶を取り上げて解説しています。

 ここではもう少し幅を広げてまずNaの結晶について考えます。Na原子の電子配置については前々回紹介しましたが、
 
です。最外殻電子は3s軌道の1個です。このNa原子の原子核が近づいて並び結晶を作ると前回説明したように2つの原子核間のポテンシャルエネルギーが低下します。

 一方、結晶がN個の原子から構成されているとすると、各軌道の電子のエネルギーはそれぞれN個のエネルギー準位に分離しエネルギー帯を作ります。3s状態には2個の電子が入れますから、エネルギー準位の数は2N個になります。Na原子の3s電子は1個だけですからエネルギー準位の半分は入る電子がなく空いた状態になります。
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 この3s電子のエネルギー帯は図Aのようにポテンシャルエネルギーの山の頂上より大きく、そのため3s電子は原子核の束縛から逃れて結晶内を自由に動けるようになります。このためNa結晶は電界をかけると電流が流れ、導体であることになります。Naは化学的には非常に反応性が高く、水と爆発的に反応することが知られています。このため実際にはCuやAlのように導体材料として使われることはありません。

 つぎにNaCl結晶について考えてみます。Cl原子の電子配置は
 
となっています。3p軌道には6個の電子が入れますから、1個分空いていることになります。一方、Naは3s軌道に1個だけ電子があります。この3s電子がClの3p軌道に入ると、Naは2p軌道、Clは3p軌道がともにちょうど6個の電子で満たされた状態になります。

 このようにすべての電子状態が埋まってしまうと、結晶のなかを自由に動ける電子はなくなり、その物質は絶縁体になります。NaClは絶縁体となることがわかります。

 つぎにCとSiを考えます。CとSi原子の電子配置はそれぞれ
 
 
です。Cでは2sと2p、Siでは3sと3pに各2個の電子があります。

 Naと同じように考えれば、2pまたは3p軌道には6個の電子が入れるので空きがあり、C結晶(ダイヤモンド)やSi結晶は導体になると推測されます。しかし実際にはCもSiも金属のような性質はもっていませんので、この説明は成り立ちません。

 CやSiは外殻のsとp軌道に各2個、計4個の電子をもっています。CやSiでは原子が近づくと外殻のsとp軌道のエネルギーはそれぞれエネルギー帯を作りますが、結晶を作るほど原子が接近するとsとpのバンドは交叉して新しい2つのバンドを作ります。図Bはこの様子をごく模式的に示しています。
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 この新たな2つのバンドはそれぞれ4個ずつ電子を収容でき、sとpの計4個の電子はエネルギーの低い片側のバンドをちょうど満たすことになります。このためCやSiの結晶は絶縁体になります。

 ただし上側のバンドは完全に空いていて、しかも上下のバンドのエネルギー差が小さいので、熱などのエネルギーが少し加わるだけで下のバンドの電子が励起されて動けるようになります。これがCやSiが半導体である理由です。絶縁体と半導体はエネルギー帯からみれば本質的な違いはありません。

 最初に、原子からの近似による結晶のエネルギー帯構造の考え方によれば個々の具体的な原子が作る結晶についてその性質が推測できると書きましたが、実際には上記のようにいろいろな原子が作る結晶はそれぞれ特殊な事情があってそれほど単純ではありません。しかし原子が結晶を作ったとき電子のエネルギーがどうなるかについて基本的な考え方としては有効と思われます。

 以上でバンド理論については終わりにします。本書ではつぎに絶縁体の光吸収の理論が書かれています。これも重要ですが、光に関する理論は後でまとめて扱うことにして、次回からは本来の目的のウィルソン模型の話に入りたいと思います。

(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房

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