石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS ドナーとアクセプタ

<<   作成日時 : 2011/06/12 00:03   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 半導体にわずかの不純物を導入すると、その不純物の種類によって電子がたくさんいるn型ができたり、あるいは正孔が多いp型ができます。それがなぜかについてはずっと以前に定性的に説明しています(http://sunatsubu.at.webry.info/200510/article_4.html)。

 例えば図A(今回使用する図はいずれも過去の記事から再掲します)に示すように、W族のシリコンにX族元素、例えばリン(P)を加えると、リンの5個の価電子のうち1個は容易に原子核の束縛から逃れ結晶内を動き回る自由電子となります。このような不純物をドナーと言います。ここで「容易に」と書きましたが、これがどの程度容易なのか、本書(*)は触れていないようですが、理論的にみておきましょう。
画像
 シリコン結晶中のリンが価電子を1つ離した状態では、リン原子は正電荷を持ちますから、これと電子の間にクーロン引力がはたらきます。原子核と電子の距離をr、シリコン結晶の誘電率をεとすると、このクーロン力によるポテンシャルエネルギーV(r)は
 
と表せます。これを用いてシュレディンガー方程式を書くと
   (1)
となります。なお、m*は電子の有効質量です。この方程式のかたちは原子核と1個の電子からなる水素原子についての方程式
   (2)
と同じです。

 この方程式の解を求める手順に立ち入ると脇道が長くなってしまいますので、ここでは省略し結果だけを示します。エネルギー固有値は
   (3)
と表されます。ただしn=1,2,・・・です。またaBはボーア半径で
   (4)
と書かれます。

 各定数の値、q=1.602×10-19 C 、m=9.110×10-31 kg、=1.054×10-34 J・sec、=8.854×10-12 C2/N・m2を用いて計算すると
 
 aB=0.053 (nm)
が得られます。

 本題の(1)式の解は、(3)、(4)式と同じ形になります。ただし
 
 
と置き換えます。すると
 
 
が得られます。aB*を有効ボーア半径ということがあります。ここで
 
と書き、εrを比誘電率と呼びます。
画像
 Siの比誘電率を12、m*=0.2mとすると、E1=0.019eV、aB*=3.2nmとなります。エネルギーはSiのバンドギャップエネルギー(1.1eV)に比べて1/100程度となります。またボーア半径は水素原子に比べて60倍ほど大きくなります。

 言い換えれば電子は価電子帯から励起される場合より1/100も小さいエネルギーで容易に原子から離れ、伝導帯に励起されることになります。この様子を図示すると、図Bのように伝導帯のすぐ下(上記の例で言えば0.019eV下)にドナー準位ができ、ここから電子が簡単に伝導帯に励起されるということになります。

 正孔を供給する不純物(アクセプタ)の場合は、例えばシリコンに対してなら3価の元素、例えばホウ素(B)を添加します。図Cのように電子が不足した原子が容易に生じ、これが正孔となります。「容易に」の程度はドナーの場合と同じように計算できます。有効質量が電子と正孔とでは少し違いますが、図Dのように価電子帯のすぐ上にアクセプタ準位ができます。

 価電子帯の電子は僅かなエネルギーでこのアクセプタ準位に励起されますので、価電子帯にたくさんの正孔ができることがわかります。電子は価電子帯とアクセプタ準位の間を簡単に行き来できますから、原子自体は動かなくても、電子が不足した原子は刻々変わり、これが見かけ上、正孔が移動していることになるわけです。図Dを眺めていると何となく正孔の概念が分かってくるのではないでしょうか。

(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ドナーとアクセプタ 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる