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zoom RSS 熱電子放出理論

<<   作成日時 : 2012/01/29 20:44   >>

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 前回、電子の拡散に基づいてショットキー障壁を流れる電流の式を導きました。ところがアメリカの物理学者ベーテ(Hans A. Bethe)はこの考えに異論を唱えました。ショットキー障壁を乗り越えて流れる電子は障壁のところでほとんど衝突したりせずに通過します。拡散現象は多くの電子の衝突を基にしているので、このような理論は適切ではないというわけです。

 ベーテはむしろ電子が金属から飛び出す熱電子放出に基づいて考える方が適切だと考え、この考えに基づく理論式を提示しました。金属から熱エネルギーによって電子が飛び出す現象は真空管のカソードで起きる現象です。「半導体の理論と応用」ではこれに因んで「二極管理論」という呼び方でこの理論を紹介しています。

 熱電子放出の理論はイギリスのリチャードソン(Owen W. Richardson)によって提示されたリチャードソン−ダッシュマンの式としてよく知られています。この式を少し修正して金属から半導体に電子が飛び出す現象を説明しようと考えたのがベーテです。
画像
 半導体から金属へ流れるx方向の電流密度Jsmは基本的に電子の移動する速度vとその速度をもつ電子の個数の積で表されます。個々の電子はいろいろな速度をもっていますから、どんな速度の電子がどのくらいいるのかを知る必要があります。これは分布関数f(v)で表されます。x方向の電流密度Jsm
   (1)
と表されます。

 分布関数f(v)は電子のエネルギーEを古典的な運動エネルギー
 
として、つぎのようなマックスウェル分布で表されると考えます。
 
電子濃度nはx、y、z方向の速度にわたってf(v)を積分したもので表されますから
 
と表されます。各方向の速度についての積分は等しいと考えれば
 
となります。この積分は公式
   (2)
があるので
 
が得られます。したがってf(v)は
   (3)
となります。

 電流を考える場合、vxの最小値v0xはショットキー障壁を乗り越えられるエネルギーですから、つぎの関係が成り立ちます。
 
電流は(1)式に(3)式を代入して
 
   
   
と表されます。ここでも積分公式(2)を用いて
   (4)
が得られます。ここで半導体中の電子濃度は以前に示したように
 
ただし
 
と書けるので、金属側からの障壁ψB
 
ですから、これを用いて(4)式を書き直すと。
   (5)
となります。ここで係数
 
は金属からの熱電子放出理論におけるリチャードソン定数に一致します。

 (5)式のJsmは半導体から金属へ流れる電流密度を表しますが、反対方向、つまり金属から半導体へ流れる電流密度Jmsは電圧Vによらないので、(5)式でV=0と置いて
   (6)
となります。正味の電流Jは(5)、(6)式の電流の差ですから
 
  
  
となります。結果的には拡散電流により導いた前回の式と同じ関数形になり、整流特性が得られます。

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