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zoom RSS 透光性電極

<<   作成日時 : 2012/07/01 19:44   >>

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 前回の最後に触れましたが、電極によって光が遮られLEDからの光の取り出し量が減ってしまう問題は、電極そのものを透明にするのがもっとも直接的な解決手段でしょう。しかしこれにもいろいろ問題があり、無条件に採用できるわけではありません。そこで今回は透光性電極について取り上げます。

 透光性の電極としてまず用いられたのは、非常に薄い(厚さ数nm程度)金属膜です。通常の金属電極と同様に作製できるのが利点です。ただし透過率を大きくするために膜厚を薄くすればするほど電気抵抗が大きくなってしまうという宿命があります。

 また材料も何でもよいというわけにいきません。あまり酸化しやすい金属だと薄い膜全体が酸化して導電性を失うという問題も起きます。例えば金(Au)は非常に薄い膜が作りやすく、薄くても比較的導電性が保たれやすいのでよく使われます。

しかしLEDの電極は半導体とオーミック接触ができなければなりませんが、これは別に説明したように金属の仕事関数と関係しています(http://sunatsubu.at.webry.info/201202/article_1.html)。n型半導体に対しては仕事関数の小さい金属がよく、p型半導体に対しては逆に仕事関数が大きい金属が適しています。相手の半導体にもよりますが、金がこの点で適当な材料とは言えません。

 そこで役割分担をしてオーミック接触がとりやすい金属(例えばTi)をまず半導体表面に非常に薄く形成し、その上に透明性の金属薄膜を積層する方法が提案されていますが、透光性の点ではあまり好ましくありません。

 これに対して前回も触れたように金属酸化物には透明性と導電性を両立できる材料があります。もっともよく知られている透明導電性材料は酸化インジウム錫(ITO)です。一般には錫(スズ、Sn)の含有量は少なく、スズ添加酸化インジウムと呼ばれることもあります。このほか、酸化錫や酸化亜鉛なども透明導電性材料として知られています。

 一般に可視光に対して透明である材料はバンドギャップエネルギーが数eV以上と大きいことが必要ですが、バンドギャップエネルギーが大きいとキャリアが熱励起されにくいので導電性は低くなります。このため常識的には透明な物質は絶縁体であるのが普通です。

この常識に反して透明物質の導電性を大きくするには、光(可視光)の吸収を起こさずにキャリアを供給できる源が必要です。これは物質に自然に存在する欠陥や不純物の場合もありますし、意識的に導入される場合もあります。一般には導電性を高めようとして何か源を増やそうとすると透過率は低下してしまう傾向があり、材料の作製条件の選定はそれほど簡単ではありません。実用に耐える透明でかつ導電性の高い材料はあまり多くの種類が知られているわけではなく、むしろ特殊な材料です。

 これらの金属酸化物も仕事関数の関係でオーミック接触が得られにくいという問題が起こります。さらにITOはスズ原子がドナーとしてはたらくためn型の半導体です。p型半導体表面にITO電極を設けるとpn接合ができてしまい、オーミック性が阻害されるという問題も起きます。

 以上のような問題についてはいろいろな解決手法が考えられています。その例を以下に紹介しましょう。
画像

 特開2008-053425はn型AlGaNに対して透明電極を設けることを述べていますが、この明細書に各種金属と透明導電性物質である金属酸化物の仕事関数が示されています。GaN系に対してオーミック電極として使われる金属の例として、n型に対してはチタン(Ti)やアルミニウム(Al)が挙げられていますが、これらの仕事関数は4.3eV程度です。一方、p型については、パラジウム(Pd)やニッケル(Ni)が挙げられ、これらの仕事関数は5.1eV程度です。p型用の方が仕事関数が大きいという理屈通りの傾向になっています。

 一方、酸化物の方はITOの他、上にも挙げた酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、また比較的新しく注目された酸化インジウム・酸化亜鉛、Alドープ酸化亜鉛といった材料も挙げられています。これらの仕事関数は4.5〜5.0eVで、上記のn型用とp型用金属の中間的な値です。どちらにも使いやすいとは言えない値です。

 これらの酸化物は大体n型の半導体です。GaN系の発光ダイオードでは基板と反対側にp型層が形成されるのが普通で、逆にはし難い事情があります。上記の特開2008-053425では基板を貼り替えるという技術を使ってn側にITOを着けています。

 p形半導体層側にITO電極を着ける工夫としては例えば、特開平10-173224に記載された構成があります。GaN系ではp型不純物にマグネシウム(Mg)を使うことが多いですが、このMgを含む薄い金属層をまず形成し、その上にITO層を設けています。金属層でp型GaNとオーミック接触をとろうという考えです。

 図を参照すると、GaN系発光ダイオードの上層のp型GaN層7の上にMgとNiの層をそれぞれ1nmと2nmの厚さに形成します。この金属薄膜電極13の上にITO透明電極15を厚さ100nm形成してp側の電極としています。金属薄膜電極は薄いので光を透過しますから、p側電極は透明電極となります。

 ところで発光ダイオード素子を発光させるには外部電源とつなぐための配線が必要です。この配線は細い金属ワイヤを電極表面に圧着するワイヤボンディングという方法がもっともよく使われますが、ITOのような金属酸化物電極に直接ワイヤを接続するのは難しく、ワイヤ接続のために別にやや厚い金属からなるパッド電極を設けます。図の17がTiとAuの2層からなるパッド電極です。この部分は光が通りません。このためパッド電極の真下で発光が生じてもパッド電極に遮られて無駄になってしまいます。

 ここで前回紹介したのと同じ考え方が使われています。パッド電極17の下には絶縁層のSiO2層11が設けられ、パッド電極の下には電流が流れ込まないようにしてあります。またパッド電極は端がITO電極15と接触するように作られています。このような電極構造によってパッド電極の真下には電流を流さないようにし、曲線の矢印で示されるように電流は透明電極の下へ流れ、ここで発光がおこるようにしています。

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