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zoom RSS 劣化の防止

<<   作成日時 : 2015/03/15 19:51   >>

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 有機材料の宿命ともいえるのは特性が劣化しやすいことです。水分や酸素など大気中にあるものの作用が原因となる場合や熱による場合もあります。つまり耐候性に問題があります。有機ELの実用化に際してもこの問題は避けて通れない課題で、無機LEDに比べてより厳重な対策が必要です。

1.素子のシール
まず常套手段として行われる手段は、外気から遮断するため密閉容器中に素子を置くというものです。ただし一般の電子素子とちがって有機ELの場合は光を取り出すための配慮が必要です。このような容器の中は真空にするか不活性ガスを封入するかします。また乾燥剤を入れる場合もあります。

図Aに容器の一例を示します(特開2002-198186より)。この場合、基板11とその上の電極12は透明で、光は基板側から取り出すようになっています、このような場合は容器(ここでは封止部材)14は金属など不透明な材質でもよいことになります。封止部材は基板上、電極上に接着剤15で接着し、内部に不活性ガス19を入れて有機薄膜16と背面電極17をシールしています。
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 これは有機ELには限りませんが、電子デバイスを容器に封入する場合、容器内の素子に電源を供給するための導入手段が必要です。図Aの例では透明電極12の上に補助金属電極13を設け、これを引き出し配線18として基板と接着剤の間から外部に引き出しています。引き出し電極の部分には表面に凹凸ができるので、リークが生じないように接着には注意が必要です。

 これについては図Bのような別の方法もあります(特開2002-324667)。(A)のように素子の引き出し電極にあらかじめフレキシブル基板(FPC)を接続しておきます。これを(B)のように袋状にした包装フィルム内に入れます。この包装フィルムの内面はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜などでコートしてあります。そしてこの包装フィルムの袋の口を真空圧着すると(C)のように配線を外に引き出した状態で素子が密封されます。この場合は内部に空間のない密着タイプとなります。
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2.有機膜中の不純物低減
 以上のような外界の劣化要因とは別に有機材料そのものがもつ劣化要因もあります。その一つが有機材料が含む不純物によるものです。例えば特開2005-44615では正孔輸送層中の硫酸イオン(SO4-2)を1000ppm以下に抑えると、発光強度が初期の半分に低下する時間(半減期)を1.5倍程度長くすることができるとしています。

 さらに特開2005-5182にはインクジェットで正孔輸送層を成膜する際、原料インクの供給ラインにイオン交換樹脂やフィルタを挿入すると、溶液中の硫酸イオンを50ppmまで減らすことができ(層中では上記のようにこれより濃度が増えます)、半減期が5倍も延びた結果が示されています。

 イオンは電界のもとでは固体有機層中でも少しずつ移動すると考えられ、長時間の使用によって電極付近に集積するようなことが起こり、これによって電流を阻害するようなことが起こると考えられます。

3.エネルギー遷移による劣化
 有機分子は外界の影響や不純物の混入などのほかに自身で劣化原因を内包しています。一例を図Cにより説明します(特開2013-531100より)。
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一重項励起による蛍光発生を利用する場合、一重項励起準位S1Eに注入された励起電子の一部は三重項励起準位T1Eへエネルギー移動を起こします。三重項励起電子の発光遷移は禁止されているので、点線矢印のように基底準位S0Eへ遷移するには熱を発生するなどしますが、化学反応を起こすエネルギーになる場合もあります。

このため、三重項励起準位へ電子が蓄積すると、発光分子自身が化学変化する恐れがあり、これが劣化原因になることがありうると考えられます。これを防止するために、別の分子を混入することが考えられます。そのエネルギー準位が図の右側に描かれています。

 発光分子の三重項励起準位T1Eより低い三重項励起準位T1Aをもつ分子を混入すると、T1TからT1Aへエネルギー移動が起こります。ここから電子の遷移を起こさせること(クエンチ)により、T1EからS0Eへの電子遷移が減少し発光分子の劣化が回避されます。

このとき混入分子の一重項励起準位S1AはS1Eより高いものを選びます。これによって発光に寄与する電子が混入分子へ逃げるのを防ぐことができます。

 なお、三重項励起準位からの発光を利用する場合は上記のような混入分子があるのは発光を阻害するので望ましくありません。

 簡単な例だけに触れましたが、このようなエネルギー遷移そのものによって発生する劣化の機構は複雑で十分にわかっていない部分も多々あり、劣化防止策については今後の課題がまだ残されています。

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